ALTS DESIGN OFFICE

寺庄の家の記事をご紹介します。 News + 2019.07.03

家づくりの流れや考え方など、うまくまとめて頂きましたので
HOUZZで紹介された記事を紹介いたします。
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施主である左官職人とのコラボレーションで生まれた、こだわりの和モダン住宅
周囲の豊かな自然を存分に取り入れた、内と外の境界が曖昧な住まい。左官職人のお施主さんと共につくった住宅には、こだわりがぎっしりと詰まっています。
リビングの窓を大きく開けはなつと、滋賀県の山々と田んぼの絶景が見渡せる、和モダンの住宅。壁と外構の一部は全て、左官職人のお施主さんが自身で手がけたという。滋賀県の豊かな自然と、職人のこだわりがふんだんに詰め込まれた「寺庄の家」を訪ねた。

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「職業柄多くの建物を手がけてきたので、マイホームを建てるなら、自分でも手を加えたいとずっと思っていたんです」と話すのは、左官職人として活動するご主人。滋賀県出身のご夫妻は、もともと所有していた滋賀県のこの土地に、憧れのマイホームを建てることを決めた。
「和風モダンで他にはないデザインの家に住みたいと思っていました。インターネットでイメージに合う写真を探して集めていたのですが、好きな写真の元を辿って行くと、設計がアルツデザインさんであることがほとんどだったんです。ここしかない、と思ってすぐにお願いしました」と奥さま。こうして、アルツデザインオフィスの建築家・水本純央さんと共に、左官職人としての技術を活かせるマイホームづくりがスタートした。

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「プランニングは水本さんに任せつつ、工事を進行しながら相談して、現場で修正変更することもありました。施工会社の皆さんとも面識があったので、本当に現場は和気藹々としていて、コラボレーションをしているようなイメージでした」とご主人。ダイニングテーブルを大工さんにプレゼントしてもらうなど、現場にいる人々の協力でこの空間が仕上がった。
シンプルでモダンな外構には、焼杉を使用。周囲の環境と美しく溶け込ませた。寝室と子供部屋を二階にまとめ、それ以外の機能は全て一階でまとめた半平家となっている。家族のための空間は全て一階とすることで、家族が自然と集まる団欒の場をつくることを目指した。

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まずエントランスに立つと、造作玄関ドアと砂利がひかれたアプローチが美しい。玄関ドア前の坪庭では、もみじが季節の移ろいを感じさせてくれる。
アプローチ横のガラス張りの窓からは、室内の様子がすでに見える仕掛けとなっている。室外にいながら室内に入ったかのような錯覚を覚え、室内に入るまでの気持ちを高揚させてくれる、こだわりのあるエントランスだ。

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リビングダイニング、キッチンの水回りは1階の中心にまとまっており、仕切りがないため、円を描くように動き回ることができる設計。
室内に入ると、大きく設けられた窓から、外の様子が透けて見える。エントランス付近の室内には、通常は外用に使われるタイルが貼られ、室内にいながら外にいるような感覚を覚える仕掛けとなっている。「内部と外部の境界を曖昧にし、両者を緩やかに繋ぐようなデザインを普段から意識しています」と水本さん。
室内の壁を担当したご主人は、クロスは使わず、全てを塗り壁仕上げという手法で仕上げた。床のタイルと外構の一部も、ご主人がご自身で手がけられている。仕事で余った材料を応用したり、色合いやテクスチャを変えるために炭や藁、土などの素材を足して雰囲気をだしてみたりと、実験をしながら進めたという。左官は初心者であった奥さまも作業を手伝い、一面一面表情が異なる、愛着のある空間に仕上がった。

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「子供連れなので、スケルトン階段やガラス張りの空間は、最初は少し心配でした。しかし今のところ全く何も問題なく、子供がいるから、と妥協しなくてよかったと思っています」と奥さま。円を描くように回遊できる導線は息子さんにも受けがよく、毎日のように家のなかを走り回っているという。
仕切りのないリビングダイニングの目玉は、圧巻の大きさを誇る、全長6メートルの特注窓。引き込んで窓を壁に仕舞い込めるので、ギリギリまで全開にできる。普段から窓をいっぱいに開けて、内部空間と外部空間が緩やかに繋がったデザインを楽しめるという。

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リビングダイニングの中心にあるのがキッチンだ。「窓をあけ放ち、田んぼを目の前にキッチンに立つのが一番好きな時間です」と奥さま。作業台も完備された大収納のキッチン棚は、扉を閉めるることで生活感なくすっきりと使用できる。ダークな色合いが美しいセラミック仕上げのアイランドキッチンはフルオーダーで、ドイツ製の食洗機やIHが完備されている。
左官職人になる前は、調理師だったというご主人。ご夫婦で一緒に料理を楽しむことが多いという。料理の手をふと止めて目をあげれば、目の前には絶景。こんな環境で料理ができるキッチンは、なかなか他にはない。

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3面がガラス張りの和室は息子さんに大人気だ。料理をしながら一人で遊ばせておいたり、お昼寝をさせていても、ガラス張りのため終始様子が確認できるため、安心だという。ガラスのドアを締め切っていると、音も気にならない。
床の間の壁は、ご主人が最近更に手を加えてアップデートされた。地層仕上げという方法で、一日一層ずつ、異なる色合いの層を重ねて模様を作り出す方法で、ご主人も初めての試みだという。仕事の技術を活かしつつ、自宅で新しい実験もできるのが魅力的だ。
和室の内部の壁は、杉に黒の塗装で仕上げた。外構の焼杉と同じように見せることで、外の空間と一続きのような雰囲気を持たせたという。

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友人を招いてのBBQなどにぴったりなバルコニー。朝はハンモックを吊って楽しむこともあるという。
ガラス張りの和室はもちろん、リビングの様子も大きな窓から確認できる。外にいるのか中にいるのか、分からないくらいの雰囲気が心地よい。特注の窓枠とレールは杉の木で出来ており、上質な品の良さがある。

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ご主人には、生まれ育った田舎の家にあるような、長い廊下をつくりたいという思いがあった。玄関を上がって右手に伸びる廊下は、京都にある町家の薄暗い路地をイメージしてつくった。廊下を進むと、シューズクロークとお手洗いがある。

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普段は一部屋になっている洗面所は、あえて扉のないオープンな仕様とした。家族が増えた時に、お風呂に誰が入っているかに関わらず誰でもいつでも使用できるように工夫したのだという。造作の洗面台が、すっきりと美しい。隣のドアを開けると、脱衣所とバスルーム。バスルームには裏玄関からアクセスできるため、左官職人のご主人が仕事で帰宅した際、直接バスルームに入って汚れた作業服を着替えられる。

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気候の良い季節には、窓を全て開け放つ。「田んぼに水が張られた時、それが軒に反射してきらきら光り、とても素敵な光景でした」と奥さま。雨の日も、屋根のおかげで水が室内に入ってこないため、この軒先で息子さんがよく遊んでいるという。
「こんな家にしたい、というイメージは沢山ありましたが、それを形にする、ということが私たちはできませんでした。イメージや要望を、住みやすさや導線のあり方まで考慮して形にしてくださった水本さんを、本当に信頼してよかったと思っています」と夫妻は語る。
「伝えた要望を考慮したうえで、私たちが想像していたものを遥かに凌駕するプランを提案してもらったときの感動は、今でも覚えています。夢を形をしてもらうことの喜びを味わいました」